ペップポジショナルプレー VS クロップ4-3-3守備ブロックの復習 -これまでの対戦で起きた変化-

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こんにちは
ヨーロッパではコロナが猛威を再び猛威を振るっています。
スペインサッカー界には大きな影響を与えていて、育成年代を含め多くのカテゴリーが外で練習すら出来ないチームがほとんどとなっています。
ありがたいことに自分が所属しているチーム・リーグには影響がほとんど無く、練習から試合まで続けることが出来ています。
「ありがとう」を漢字で書くと、「有難う」と書くみたいで、意味は有る事自体が難しい。
つまり今あることは当たり前じゃないという意味があります。
まさにその言葉通りの状況です。
有難う
 
 
 
本題です
今シーズン初のManchester City vs Liverpoolがあるということで、今までのこの対戦の流れを復習しておきましょうという目的の記事です。
本当はもっと書きたいことあったんですが、文章にするに至らなかったので、コンパクトにしました。
自分に負けたのは少し悔しい。
 
とはいうものの、このカードで常にカギとなるプレー局面について触れた記事なので見て損はないかなと思うので是非目を通してみてください
 
この記事では、Manchester City目線でLiverpoolをこの2シーズンでどの様に適応していったかについて触れていきます。
 
 
 
 
 
分析対象試合と結果
この記事を書くにあたって分析した試合は18-19シーズンと19-20シーズンのリーグ戦4試合です
 
18-19前半戦(8節)  LIV 0 - 0 Man C 
18-19後半戦(21節)Man C 2 - 1 LIV 
19-20前半戦(12節)LIV 3 - 1 Man C
19-20後半戦(32節)Man C 4 - 0 LIV 
 
 
 
最初にざっくりと4試合を振り返る
 
1試合目
ショートパスを沢山使いながらじっくり相手ゴールに近づいて行くゲームプランで臨みました(特に前半)
この試合ではそもそもLiverpoolの3トップを超えた後にチームの問題点がありましたが、ゴール前に到達出来た時に単純なクロスしか手段がなく決定機を多く作る事は出来ませんでした。
 
 
2試合目
3トップを超えた後に、ボールサイドから前進してしまい、スペース・時間・優位性が無い状態で攻撃していた前回とは違い、サイドチェンジを使い前進するという修正を加えたペップ。
 
フィニッシュの問題は主に2つの解決策を用意
・サネのドリブルとフリーランでチャンネルに侵入して決定機作る個人の能力
・チームとして、ロングボールとカウンター優先度を上げることでスペースを得た状態で攻撃できる機会を増やす
 
前者は機能したといえるが、後者はどちらとも言えない印象。
つまり、メリットがデメリットを上回れなかった
 
 
3試合目
この試合ではロングボールを積極的に用いる姿勢を見せます。
前回はロングボールでどのように優位性を作るかが見えませんでしたが、この試合ではロングボールの受け手に対してのサポートが用意されていて前進に成功する場面も数多く見られました。
ショートパスでLiverpoolの守備の構造上空いているスペースを上手く使うことにも成功していましたが、前半立ち上がりの2得点が重くのしかかりました。
 
 
4試合目
配置とショートパスを使ってIHの攻略に成功し多くのチャンスを作れた試合。
ゲームコントロールも機能し、それが結果に表れた。
Manchester City vs Livepoolの対戦において大きな分岐点となった試合になると思われる。
 
 
 
 
 

ここ2シーズンでの変化 

 Man Cの攻撃の縦のスピード 
結論から言うとペップは「攻撃の縦への速さ」が勝利のカギだと理解します。
きっかけは18-19の前半戦で先ほど書いた通り、ショートパスを沢山使いながらじっくり相手ゴールに近づいて行くゲームプランで臨んだ結果、チャンスを作ることが出来なかったからです。
その試合以降から「縦に速い攻撃」をゲームプランの軸の一つとして取り入れるようになります。
 
とはいうものの、縦の速さというのはみなさんご存じの通り諸刃の剣にもなりうるもので。
それを象徴する面白いシーンがありました。
 
19-20の前半戦(3-0でMan Cが負けた試合)で立ち上がりからペップのチームとは思えない程の縦の速い攻撃をしていました。
ハーフェーラインを超えるのに3本程度のパスしかせず、ほとんどロングボールを使ってフィニッシュにたどり着いていました。
 
その結果Man Cは立ち上がりの時間帯だけでフィニッシュも、チャンスを作れる距離からのFKも得ました。
ですが前半12分でスコア2-0
そこからは途端にショートパスを選択し、ゲームをコントロールし始め、カウンターを受ける回数を減らす事に成功する。という出来事が象徴的でした。
つまり、得点したかったら速い攻撃が効果的だが、その分失点することを誰よりも分かっているペップが垣間見えた瞬間でした。
 
 
 
 LIV攻略のポイント IH 
LIVの守備の構造上空いているスペースがあります。
3センターの横です
WGとSBの間とも言えますがここでは「3センターの横」と呼びます。
 
ただこの配置はスタートポジションなので、ずっとこのスペースが空いてるわけではありません。
Liverpoolの強さの一つの要素は、このスペースでボールをここで受けた時に使わせない仕組みが存在することです。
ただ構造上人がいないのも事実です。
なのでここが攻略のカギになると考えるのは自然なことだと思います。
 
18-19前半戦から19-20の前半戦の3試合でペップがこのスペースを有効活用する為の攻略法としてピッチに表現したのはこの4つ
 
 

解決策

 

解決策1 IHを固定してWGへのパスコースを開ける

シーン1

 

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B・シルバが下がりながらボールを要求

ワイナルドュムがマークの対応

 

 

 

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コンパニーがサネにパス
B・シルバがいたことによって、ワイナルドュムがパスコースを切る役割に回れなかった
 

 

  

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サネにボールに渡り、フリーのSBに落とし前進を成功させる
 
 
 

シーン2

 

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ストーンズがハーフスペースにいるスターリングにパス

フェルナンジーニョがアンカーの位置にいることで、ミルナーはパスコースを切るにポジションを取れなかった

 

 

  

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LiverpoolのSBが食いつく。

スターリングはフェルナンジーニョに落とす

 

 

 

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フェルナンジーニョスターリングが空けたスペースに走っていたダニーロにパス
  

 

 

 

 
解決策2 レイオフ
 
シーン1
 

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ストーンズがボールを保持している 
 
 

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B・シルバがボールを受けに下がる

ここで肝になるのは、食いついているのはLiverpoolのIHミルナー

 

 

 

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B・シルバはSBのダニーロにパス
もし食いついたのがアンカーだったら、ダニーロにIHがしっかり対応出来ていただろう。
 
 
 
シーン2
 

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ラポルテがボールを保持しているシーン

 

 

 

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この試合ではアンカーでプレーをしているフェルナンジーニョがマークから離れる動きを入れながらワンタッチでメンディーへ

 

 

 

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フリーでボールを受けることに成功
3センターの真ん中(アンカー)のヘンダーソンがアンカーのフェルナンジーニョのマークの為に高い位置を取っていて、IHである他の2人はMan CのIHを見るために低い位置を取っている。
つまり、一時的にLiverpoolの陣形は4-2-3-1になっている。
 
 
 
解決策3 3IHを片側サイドにスライドさせてインサイドレーン(または中央レーン)からサイドチェンジ
 

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ストーンズがボールホルダー

 

 

 

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コンパニーにボールを渡し左SBにサイドチェンジのパス

 

  

 

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ラポルテが時間を得た状態でボールを受ける


 
シーン2

 

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Man Cの左SBがボールを保持

 

  

 

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フェルナンジーニョにボールを渡し、ロングパスがウォーカーに向かっている画像

ここで見逃せないのは、ウォーカーに対応しなければならないワイナルドゥムがこの時点でピッチの真ん中にいること(写真にギリギリ映っている選手)

 

 

 

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ウォーカーはフリーで受ける。
案の定対応に送れてしまうワイナルドゥム
 
 
 
 
 
そして19-20シーズンの後半戦でManchester CityがLiverpoolの守備構造を攻略し、4-0で勝利した試合で頻繁に見られた解決策
 
解決策4 ダブルボランチのポジショニングでLiverpoolのIHを引き出し、IHの背中に人を下ろしてフリーマンを作る 
 
シーン1
 

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エリックガルシアがボールホルダー

 

 

 

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CBの間に降りたギュンドガンにパス

勘のいい方はお気付かもしれませんが、Liverpoolの3センターが前に出てきています

 

  

 

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ギュンドガンが少し中に運び、ヘンダーソンの裏にいるWGのスターリングにパス

 

 

 

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膨大なスペースで受ける
Liverpoolの右SBはMan Cの左SBのメンディが高い位置を取れる位置にいるので、スターリングについていくは難しい判断
 
 

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最終的にこのプレーシチュエーション
DFラインの裏を狙ったが決定機には至らなかった
 
 
 
シーン2
  

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エデルソンがギュンドガンへパス

 

 

 

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ギュンドガン左足でロドリにパスしている瞬間

 

 

 

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ここでも、3センターの位置が前掛かりになっている

ギュンドガンのパスがズレて苦しい体勢になったが. . .

 

 

 

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Liverpoolのアンカー裏で待っていたスターリングにボールを渡す

 

 

 

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前を向いて先ほどと同じ様なシチュエーション

 
 
 この試合で変わったこと 
19-20シーズンの後半戦はこの対決において分岐点となると思います。
それくらい解決策4の「Liverpoolの3センターを引き出す戦術」はManchester Cityにとっては大きな前進でした。
なぜこの試合の戦い方がManchester Cityにとってそこまで重要だったかというと、今までは
 
・ボールを保持すれば、セットされた状態で攻めることとなり決定機を創ることに難しさが出る。
・ロングボールを使って縦に速い攻撃をすれば技術負荷が上がり、ボールを失う確率が上がり、カウンターを受けやすくなる。
 
だったのがこの戦い方で「ゲームをコントロール」しながら「縦に速い攻撃」がこのプレーで両立することに成功したからです。
この2つが試合どのように変わったのかをもう少し噛み砕いてみます
 
ゲームをコントロール
グラウンダーの足元へのパスという技術負荷の低いプレーで、ミスが少ないのでフィニッシュに到達する確率も高い。
さらに縦に速くても、ミスが少ない為間延びしている瞬間に失う回数は少ないので、配置をコンパクトな状態に保ち続けることが出来る
 
 
 
ショートパスでの縦に速い攻撃
変わった4つのポイントがあります
 
1. センターレーン(またはインサイドレーン)でIHを完全に超えた状態(位置的優位)でボールを受けている 
2. Liverpolの3トップラインを越えたらDFラインを狙っていた
(ここも重要ですが今回は触れない)
3. ボールホルダーが前を向いた状態で、DFラインと対面しながら攻撃することです。
4. 3センターを超えた後、3レーンを埋めて疑似的カウンターを創れるようになった。
 
 
実は3と4は少し前に書いたサッスオーロの記事で書いたこと同じ意図を持っています。
 
 
 
 
 
知っている方もいるとは思うんですが、この戦術は採用しているチームが昨シーズンから増えています。
(余談ですが記憶が正しければモウリーニョレアルマドリードのカウンターは3レーンを埋めるルールがあったように思います)
 
今になって、このプレー原則がセットオフェンスの一部分に採用されたといったところでしょうか。
この戦術も欧州サッカーのスタンダードになるのは、あと数年だと思います
 
 
 
 
 

まとめ

今日行われるManchester City vs Liverpoolの要点3つ
・「攻撃の縦の速さ」と「ゲームコントロール
・LiverpoolのIHの攻略がカギ
・Liverpoolの高いDFラインを狙う
 
時間の関係でここまでです!
今回の対戦ではどのような変化を見ることが出来るでしょうか
もしこの記事のことを頭の片隅に入れておいていただけたら幸いです。
 
 
最後まで読んでいただいた方有難うございました!