サッスオーロのアタッキングサードまでの設計図とサッカーの近未来について少し
序章・目次
久しぶりのブログです
前回のヘタフェ記事に続き設計図解説シリーズです
前回の記事はこちら
今回取り上げるのはサッスオーロ
自分の記憶が正しければ、昨シーズンセリエAでポジショナルプレーを実現するチームとして一時期話題になりました。
今シーズンも同じ監督の下、引き続き同じ道を歩んでいます。
今回このチームを選んだ理由は秘密ですが、ざっくり言うと個人的に今興味のあるプレーに取り組んでいるので思い追ってみた次第です。
話は少しそれますが、一つのチームを立て続けに5試合前後見るのは勉強になるということを、ここ最近再確認させられています。
最初の3試合でチームの構造が大体見えてくるので、それ以降は相手によってどう変えているか、どの部分は変えていないのか、更には相手がこのチームを分析した結果どのようにプレーするかが良く見えてきます。
人それぞれ学習のフェーズは違います。
いろいろなチームを見た方が得るものが多い時期もありますし、見たい戦術を絞ってみるのも勉強になりますが、もし興味があれば「1チームを続けて5試合見る」を試してみてください。
ではそろそろ本題へ
今回も分析対象試合は5試合です。
セリエAの試合が再開する前に分析自体は終えたので、ロックダウン前の試合限定となっています。
セットオフェンスの基本的な配置と攻撃の狙い
基本的な配置は4-2-1-3
相手がゴールキックからプレッシャーを掛けてくる時
相手がミドルブロックを構えている時
サッスオーロのボール保持の狙い
彼ら創りたい理想のプレーシチュエーションはこれ
(見ていただきたいシーンからスタートするのでお見逃しなく)
このシチュエーションをDF目線で見ると:
・CBがプレスに出て、後ろがカバーリングしなければ一番危険なCBの背中が開く
・CBがプレスに出て、後ろがカバーリングすればハーフスペースにいる選手に時間が与えられられる
(僅かな時間だが、カバーリングが間に合わない+場所が場所なので抜かれたら致命的な状況)
なので、相手はセオリーであるペナルティエリアまで後退を選択する
(ディレイで守備の数的優位を作る時間を稼ぐ)
この状況を創れば最悪シュート又はCKを獲得まで辿り着くことが出来ます。
ここから先の仕組みも厳密にいえばあるのですが、個人の判断もかなり影響しているので割愛します。
先ほど言いましたが、この形はボール保持時の理想です
つまりセットオフェンスでも、カウンターでもこの形を作ることを積極的に狙います。
セットオフェンスの場合は、相手が前プレを掛けてる時に比較的多くこのシュチュエーションが発生します。
守備ブロック組んでる時は基本中は開かないので、発生頻度は落ちます。
このチームの特徴はカウンターでもセットオフェンスでも理想の形が一緒という事です。
実際に、練習やミーティングでデルビ監督が「我々にとって、カウンターとセットオフェンスは分かれていない!ボール保持だ!」と言っているかは分かりませんが、目的地が同じなのは間違い無いでしょう。
このような、DFラインと対面出来る状況を創れそうな状況になったら文字通り「スイッチ」が入り、チーム全体が自分のタスクを連続して無駄のない動きで実行していきます
第2の選択肢
当然相手は研究してきます。
特にセットディフェンスでは対策を準備してくるので、相手が前からプレッシャーを掛けてきたとき又はミドルブロックで中を閉められた場合、サイドでの鍛えられたグループ戦術で前進を試みます。
前進の手段は以下の通り
相手SB又はWBの裏を取る
オーバーラップで2c1、SBを引き付けWGをフリーに
SBがWGにパス
WGが受け、相手WBが食いつく
それを見たSBがパスアンドゴーで裏のスペース使いに行く
瞬間的2対1が出来たので、WGはSBにパス
もう一度2対1が出来る
ボールホルダーに食いついたCB
トップ下も見事なポジションの微調整でパスコースを作りフリーでボールを受けることに成功
このシーンはサイドから前進して最終的に理想の形を創りました。
相手が誘導してボールを奪い来ている場面
SBがボールを受け、画面にはまだ映っていないWGに縦パス
WGがひし形を作る為にサイドに流れてきたボランチへ落とす
フリーでボールを受けたボランチはサイドチェンジを選択
ウィークサイドから前進を成功させる
ロングボール+落とし
相手がゴールキックからかなり強いプレスを掛けてくる場面
ボールを受けたSBはCFにロングボールを当てる
WGが落としを受ける為にサポート
落としを受けたWGは中央でボールを要求しているトップ下にパスをし、サイドチェンジに成功する
最終的にはこんなシーン
最終的に理想の形に近い状況(DFラインをピン止めし、その前のスペースがMFによって完全にカバー出来ていない状況)を創ります
サイドで三角形やひし形を作り、そこから相手の配置に合わせて適切な選択肢をチームとして選ぶ。
それによって、フリーマンを作りプレースピードを落とさず決定機又はフィニッシュに持っていく、またはセットオフェンスに移行するかという判断をします。
実際に自分が見た5試合では、相手がペナルティエリア前に守備ブロックを構えた時以外はコンスタントにこの形を格下、各上相手に関わらず再現していました。
思考の寄り道
果てしない所まで行ってしまいそうなのでここまで。
ポジショナルプレーの一般化はとてつもない速さで進んでいます。
今のゾーンディフェンスのように、どのチームにもある程度の完成度のポジショナルプレーが常識になる未来が来るのは確実といっても過言ではないでしょう。
どんどんオーガナイズが進んでいくサッカーはどこまで行くのでしょうか?
個人的には少し先の未来のサッカーは、複数のチーム戦術を使いこなすチームにあふれると思っています。
例えば、引いて守れて、ボールもある程度の完成度のポジショナルプレーも持ち合わせ、色んな配置に対応出来る前プレの引き出しの多さ。
そしてさらに、オーガナイズされたカウンター、ファー詰め、クロスに対しての守備
などなど、いくつもの欧州一部のチーム(中堅チーム含め)がここ数シーズン取り入れ始めているこれらの戦術のいくつかを持ち合わせてるそんなチーム。
ポジショナルプレーやアトレティコマドリードのような細部の仕組みまで計算された守備ブロックがペップやシメオネの専売特許だった10年前に比べると、だいぶ一般化が進んだのを見ると、そんな未来を想像せざるを得ません。
そうなると、トレーニングはどうなるでしょうか?
ストリートサッカーの回帰も話されていますが、もし先ほどの未来が待っているなら、選手へ求められる戦術レベルの要求の高さは止められないでしょう。
セッションの内容の効率化がさらに上がっていけば、戦術のレベルを上げつつストリートサッカーの要素も取り入れられるかもしれません。
育成のリレーをどれだけ計画的に出来るか問題もありますが。
こう見ると、どんだけレベル上がってるんだよ!と思うかもしれませんが、
そんな時代の真っただ中にいると自分は思っています。
空想のお話しはここまで。
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【ブログ記事書きました】
— Hiroki Tomizawa (@HSPHIROKI) 2020年7月15日
前回より少しコンパクトです
最近のサッカー観戦で感じた事を記事の後半に書きました。
ぜひ目を通してみてください。
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